理想の会社|中小企業の経営者から学ぶ組織づくりと仕事術

社員・顧客・採用が動き出す シンプルで強い企業ストーリーの書き方

2021.07.26

大後 ひろ子

C-OLING代表 ブランディングコンサルタント

なぜ企業ストーリーは必要なのか

中小企業の成長には「差別化」や「独自性」が重要だと言われています。その中であなたの会社は、 短納期や低コスト、その上で高品質と言った現場を苦しくする施策をPRポイントとしてはいないでしょうか?

「主人公が数々の困難を乗り越え、成長し、目標を達成する」

このようにストーリーにのせたメッセージというのは一見単純に見えるかもしれません、 しかしこのストーリーを伝えることが顧客や社員の心を動かし、長期的にあなたの会社に思い入れを持つ効果的な手法の一つなのです。

ではなぜストーリーにのせると私たちは対象に思い入れを持つことができるのでしょうか? それは、私たちが何かを応援するには理由が必要だからです。主人公の背景を知ることで、 読み手が自分の経験との共感するポイントを見出すことができるようになり、応援したくなる心の動きを作る、 この手法をストーリーブランディングと言います。
この手法は大規模な広告やリソースを割けない中小企業にとって有効な手段となります。

ストーリーブランディングのメリット

企業の成長には差別化が重要だと言われています。ストーリーブランディングはその差別化において様々な効果をもたらします。

  • ストーリーがあることで記憶に残りやすい
  • 企業の背景から価値を感じ取ってもらえる
  • 価格でなく、共感して選びたくなる
  • 宣伝のような圧を感じずに、企業メッセージを感じ取ってもらえる

先にも述べたとおり中小企業が価格や品質、スピードだけで勝負してはいけません。 一時は売り上げが上がるかもしれませんが、あなたが金額の安定した長期的な取引を望むのであれば、 あなたの会社の背景を理解した上で商品やサービスを選んでもらうことが効果的です。
皆さんも普段愛用している製品や取引を続けたい企業を人に紹介するとき、値段や機能性だけではなく、 その商品や会社の背景についての良い点を述べることでしょう。これもあなたがストーリーに共感しているかならのです。 同じようにあなたの会社も同じようにストーリーブランディングを初めてみませんか? 限られたリソースの中で差別化を実現しなければならない中小企業にとって、取り入れやすく効果の大きな手法なのです。

企業ストーリーの書き方

この章では企業ストーリの書き方の大きな流れをご紹介します。ストーリーブランディングには 過去・現在・未来の視点が重要です。大きく分けて5つの流れで構成することができます。

  • 始まりとその背景
  • 苦難とその背景
  • 転換期とその背景
  • 達成とその方法
  • 今までとこれからのビジョン

とてもシンプルですが、会社の遍歴とその時代の背景を合わせて順序立てて言語化することで、 起伏が生まれ、読み手に応援される「主人公のストーリー」となるのです。
逆に、

私は資産家の1人息子として生まれ、その莫大な資産を運用して、現在は3つの会社を設立し巨額の富を手に入れています。

いかがでしょう?
このようなストーリーには何の起伏がなく、応援する気持ちが湧きませんね。
また一方で、

私たちの会社は価格が安いですが、笑顔で頑張っています!

コストや納期ばかりをPRしている企業に対して、人はこのようなストーリーを思い描きます。なぜ安くできるのか?なぜそれでも笑顔で頑張れるのか? このままでこの会社は潰れないのか?そして、その無意識的に顧客の頭の中で作られたストーリーに対して不信感を抱いてしまうのです。 低コストや短納期を否定しているのではありません。現在低コストや短い納期を顧客に提供できているのは、 これまでにいくつもの苦難や改善などの企業努力という背景があったはずです。先にも書きましたが、 「主人公が数々の困難を乗り越え、成長し、目標を達成する」このような起伏と背景のあるストーリーに私たちは心惹かれます。 だからこそ、あなたの会社の歴史の中にある一つ一つの背景を、過去・現在・未来の視点を多くの人と共有できるストーリーとして言語化することが重要なのです。

企業ストーリーの広め方

企業ストーリーは共有して初めて効果を発揮するものです。しかしせっかく言語化することに成功した企業ストーリーを自社のホームページに載せているだけ、というケースをよく見受けます。 そこで今回は上記の流れでまとめた企業ストーリーを広めることのできる様々なシーンについてもお話ししたいと思います。 社員全員が暗記でき、全ての顧客に理解・共感されるくらい目につくように商品の企画書やパンフレット、日々の会話の中にも盛り込んでいきましょう。

また企業ストーリーは新規顧客獲得といった社外向けのアウターブランディングの材料として考えられがちですが、 社内の結束を高め生産性を上げるためのインナーブランディングとしてもとても重要な役割を果たします。

アウターブランディングとして

  • 既存商品の新規顧客獲得PR
  • 新規事業の既存顧客へのPR
  • 新規事業の新規顧客獲得へのPR
  • 周年記念のプレスリリース

インナーブランディングとして

  • 既存事業のリブランディング
  • 新規事業のチームビルディング
  • 既存商品や既存技術に対する社員教育
  • 新卒採用
  • 中途採用

このように企業ストーリーを共有できるシーンは多く存在します。その結果、会社という主人公は、社外そして社内の全てのサプライヤーから応援される存在となり、 長期的な信頼関係を結べる堅実な土壌を築き上げることができるのです。これはあなたの会社にとって大きな財産になるはずです。 もし企業ストーリーがホームページに載せているだけになっている、もしくは企業ストーリーをまとめたことがないという経営者の方は、 まずは社員に会社の歴史を話してみることから初めてみるだけでも十分効果を感じることができるでしょう。

まとめ

ストーリーブランディングは、顧客獲得・社員教育・採用活動といった中小企業の悩みに大きな効果を生む可能性を秘めています。 そして、新しいことをゼロから始めるような大規模なものではなく、自社の歴史を紐解くという少ないリソースで効果を生む事ができるのです。 中小企業の経営者が会社の今後の成長に向け、ブランド戦略に課題を抱え、何をP Rしたら良いのかというご相談をよくいただきます。でも安心してください。 企業ストーリーは必ずどんな企業にもあるのです。まずは創業エピソードや商品やサービスの開発エピソードを軸に、ストーリーを書き出していきましょう。 自分一人で文章として書き出すことが難しければ、インタビューやライティングのプロに頼むのも一つのやり方です。

あなたがもし現在の社外・社内だけでなく、未来の社内・社外からの求心力を高めていきたいと考えているならば、 今日からさっそく企業ストーリーの言語化と発信をしてみてはいかがでしょうか?

WRITER

大後 ひろ子

C-OLING代表

生活用品メーカーで10年間企画職に従事し、企画立ち上げから海外工場との商談、販促まで商品開発のゼロから一貫して行い、多くの商品をブランディングし、リリース。 8年販売され続けるヒット商品を始め、開発商品点数累計約1,200点、約1,700店舗へ導入。ブランディングを主軸とした、経営コンサルティング、 社内教育の3つの事業を通して、多くの人の生活に豊かさを提供ができる企業を社会に増やしたいと考えています。